会社案内パンフレットなどの広報ツールを作成する際、よく「目的や対象を鮮明に」ということが言われます。確かに、"何のためにつくるのか""誰に何をアピールするのか"を鮮明にすることで、訴求ポイントや表現方法を絞り込むことができ、単純に必要な要素を並べるだけのパンフレットよりも効果的なものができそう・・・な気がしてきます。
しかし、実際のところはどうでしょうか。果たして「会社案内」という全社的な広報ツールにおいて、目的や対象を絞り込むことができるでしょうか・・・。ある部門は「取引先に新事業や新製品を知ってほしい」と言います。一方で、新規開拓をしている部門では「自社を知らない読者にこれまでの歴史や培ってきたノウハウ、強みをアピールしたい」という要望もあるでしょう。さらに採用活動に用いる人事部門では「事業全体のことやビジョンをなるべくわかりやすく紹介したい」という声も出るでしょう(実際、Webを使った会社案内=コーポレート・サイトには6つも7つもグローバル・ナビが設けられています)。
このように、こと「会社案内パンフレット」の企画にあたっては、"部門によって求められる成果が異なる"という前提条件から、目的や対象を絞り込めない場合が多いのです。
では、どうすれば良いのでしょうか――。大切なことは、その会社の事業活動ごとの「ステークホルダーの関心・期待・懸念」を把握した上で、"重視すべきステークホルダーは誰か"を考えることです。
会社は生き物です。変化し続ける事業環境のなかで、誰にどんな価値を提供していくのか。どんなビジョンを実現しようとしているのか。その時々で、重要なステークホルダーは変化します。こうしたステークホルダーの関心・期待・懸念に応えるPR要素を導き出すこと。まずはそれが出発点となります。
もちろん、重要なステークホルダーは複数存在しますから、当然ながらPR要素は複数あがることになります。そこで重要になるのが、複数のPR要素を成長戦略に沿って"コーポレート・ストーリー化"すること。PR要素を使って"誰もが覚えやすい成長物語を描く"のです。たとえば歴史があり、多事業展開を進めている会社なら、<創業期のエポックとアイデンティティの確立の話題から、多彩な事業展開の話題へ、未来に向けた研究開発活動へ>といったストーリーを。たとえば将来性のある事業やサービスを強化していく会社なら<解決すべき社会課題を紹介したうえで、ソリューションをもたらす事業・製品、その基盤となる技術紹介を>というように、その企業ならではの成長物語を描くことで、多くのステークホルダーの参加意識(製品購入・株式投資・入社意識)を高める、つまり効果を高めることができます。