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投資家向け広報(IR支援)

脱炭素に向けた日本企業の針路
―2050年カーボンニュートラル宣言をうけて―

法政大学 人間環境学部 教授
長谷川 直哉

掲載日:2020年12月11日

05拡がるESG金融のインパクト

企業が短期的な利益追求への傾向を強めた背景には、投資家のショートターミズム的な投資行動が大きく影響している。投資家が短期的な投資リターンを追求するあまり、企業の長期的な成長や価値向上を軽視する傾向が強くなっているのである。

責任投資原則(2005年)や「責任ある機関投資家の諸原則」(日本版スチュワードシップ・コード)(2014年)は、機関投資家に対してショートターミズムを改め、長期投資を通じて投資先企業の持続的成長をサポートすることを求めている。

SDGsやパリ協定によるサステナビリティの世界的潮流を背景に、財務要素だけではなく、環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)という非財務要素を投資先企業の選定プロセスに組み入れたESG投資が急速に拡大しており、経営者の意識にも変化がみられるようになった。

2015年、ノルウェー政府年金基金は、石炭関連事業から収入の30%以上を得ている企業をダイベストメント(投資撤収)の対象企業に指定した。この中には、石炭火力発電を行なっている日本の電力会社も複数含まれている。SDGsやパリ協定によって、気候変動対策を巡る流れは大きく変わったのである。

長期的にみて、気候変動リスクが企業経営に与える影響は大きくなると予想されており、欧州の機関投資家は気候変動リスクを低減させるためにダイベストメントを活用している。つまり、炭素依存型ビジネスから脱却できない企業は、投資家からみればリスクの高い企業となり、投資対象から除外される可能性が高くなるのである。

2017年、ドイツの環境NGOは、石炭採掘から石炭火力発電に至る石炭関連産業を網羅した「脱石炭リスト(Global Coal Exit List)」を公表した。このリストに掲載された企業は、ダイベストメント予備軍ともいわれている。リストに含まれている日本企業の中には、石炭関連事業からの撤退を表明する企業も現れている。

2019年9月に発足した「責任銀行原則」は、銀行に対してSDGsやパリ協定と整合した投融資行動を求めており、日本では3大メガバンクや一部信託銀行が署名している。2012年に策定された「持続可能な保険原則」は、保険会社に対してESG課題を考慮に入れたリスク管理を求めており、仏アクサ、独アリアンツ、スイス再保険は、企業に対して石炭依存度の低減を求めるエンケージメントを強化するとともに、石炭火力発電所に対する損害保険の引き受けや投資を停止している。

機関投資家、銀行、保険会社によるESGを軸としたエンゲージメント拡がりは、ビジネスの脱炭素化の流れを加速し、社会にとって長期的に好ましい結果をもたらすと期待されている。

Profile

法政大学 人間環境学部 教授
長谷川 直哉
1982年安田火災海上保険株式会社に入社し、資金証券部、株式部、財務企画部、損保ジャパンアセットマネジメント等において資産運用業務を担当。1999年エコファンド「ぶなの森」を開発。2002年早稲田大学大学院法学研究科修士課程修了(法学修士)、2005年横浜国立大学大学院国際社会科学研究科博士後期課程修了(経営学博士)。2006年山梨大学大学院准教授、2011年から現職。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。

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