セミナーレポート
コーポレート・ガバナンスコードにどう対処すべきか
公益社団法人会社役員育成機構 代表理事
ニコラス・E・ベネシュ様
開催日:2015年8月28日
2015年に公表された「コーポレート・ガバナンス・コード」について、現在多くの上場企業が対応していますが、その主旨や内容について疑問や悩みをお持ちのご担当者も少なくありません。そこで当社は、コードの本質的な目的や狙いについて理解を深めることを目的に、コードの提案者でもあるニコラス・E・ベネシュ氏を講師にお招きし、クライアント企業様を対象としたセミナーを開催しました。
Profile
- 公益社団法人会社役員育成機構 代表理事
ニコラス・E・ベネシュ様 - 米国スタンフォード大学政治学学士号取得後、米国カリフォルニア大学(UCLA)で法律博士号・経営学修士号を取得。J.P.モルガンにて11年間勤務後、M&Aアドバイザリー業務に特化する株式会社JTPを創設し率いる。米国カリフォルニア州及びニューヨーク州における弁護士資格取得。現在、在日米国商工会議所(ACCJ)の成長戦略タスクフォース委員長を務める。2010年には、法務省と法制審議会会社法部会に対し会社法改正に対する意見を提供した金融庁主宰コーポレートガバナンス連絡会議に所属。2013年、金融庁主導の「コーポレート・ガバナンス・コード」制定の提案者として、担当議員及び金融庁にコード内容に関して詳しく助言。
投資家の身になって考えることが大切です
【今回の講義の要点】
コーポレートガバナンスの重要性が示されたのは「日本再興戦略」改訂2014(成長戦略)であり、鍵となる施策は『日本の「稼ぐ力」を取り戻すこと』。そこで、同戦略の中で重要な点(下記をはじめいくつか)を解説していただいた。
『日本企業の生産性は欧米企業に比して低く、特にサービス業をはじめとする非製造業の分野の低生産性は深刻で、これが日本経済全体の足を引っ張っている状況にある。』
『経営者のマインドを変革し、グローバル水準のROEの達成等を一つの目安に、グローバル競争に打ち勝つ攻めの経営判断を後押しする仕組みを強化していくことが重要である。』
『好決算を実現した企業については、内部留保を貯め込むのではなく、新規の設備投資や、大胆な事業再編、M&Aなどに積極的に活用していくことが期待される。』
『資本コストを意識してコーポレートガバナンスを強化し、持続的な企業価値向上につなげることが重要である。』
これら要点を示しながら、投資家は「導入の具体的なタイムラインを伝えると、企業に対する信頼度が高まる」という意見を皆さんに紹介。
『組織と慣行を本格的に変えるには時間がかかります。できるところから始めればいい。全体のプラン、効果的な実現へのコミットメントを事前に示せば、投資家は歓迎する。』
スケジュールも例示していただいた。
最後に、本コード(原案)の目的も投資家に期待を持たせることであるとして、まずプリンシパルベース・アプローチについては『関係者がその趣旨・精神を確認し、互いに共有した上で、各自、自らの活動が、形式的な文言・記載ではなく、その趣旨・精神に照らして真に適切か否かを判断すること』を強調された。さらに日本のCGコードの特徴について説明された後、「CGコード全文を読んだ投資家の身になって考える」ことの大切さについて、投資家が質問しそうなことを例に挙げて説明していただいた。
今回ご参集いただいたクライアント企業様にも申し上げましたが、当社ブレーンセンターはクライアント企業の皆さまの実情をふまえて、ご一緒に、どのように対策していけばよいかを考え、提案いたします。
参考リンク)
- 一橋大学深尾教授の分析に基づきACCJ在日米国商工会議所(ACCJ)の成長戦略タスクフォースが白書を発表
在日米国商工会議所(ACCJ)のプレスリリース
http://www.accj.or.jp/ja/news-a-media/press-releases/doc_view/112-accj
白書「成長に向けた新たな航路への舵取り ―日本の指導者への提言」
http://www.accj.or.jp/images/GSTF_WP_J.pdf - 2013年10月にベネシュ氏が最初にコーポレート・ガバナンス・コードを提案
「アベノミクスが必要とする改革とは」(Wall Street Journal)
http://jp.wsj.com/articles/SB10001424052702303941704579122992808953838 - 2014年1月にベネシュ氏が金融庁主導のコーポレート・ガバナンス・コード制定を提唱
法と経済のジャーナル Asahi Judiciary
http://judiciary.asahi.com/author/index2.html?id=0457