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ブレーンセンターの「視点」

アウトプットとアウトカム。結局なにが違うのか。定義と事例を踏まえて、自社らしさを整理する

企業ごとに異なるアウトプット・アウトカムの考え方

統合報告書では、「企業がどのように価値を生み出し、将来の企業価値につなげていくのか」を示すことが重要です。こうした価値創造の流れを図やフレームで表現したものが「価値創造モデル」です。価値創造モデルを検討する際、多くの担当者が悩むのが「アウトプット」と「アウトカム」の整理です。

実際に各社の価値創造モデルを見比べてみると、

  • アウトプットを正・負の両面から整理する企業
  • アウトプットを事業セグメントごとに整理する企業
  • アウトカムを顧客価値と社会価値に分けて整理する企業
  • アウトカムをステークホルダーとの関係性や財務・非財務の成果として整理する企業

など、表現方法は大きく異なります。

こうした違いが生まれるのは、企業ごとに「何を価値として伝えたいか」が異なるためです。顧客や社会、そして自社にどのような価値を生み出し、どのような変化をもたらしているのかによって、アウトプットとアウトカムの整理の仕方も変わります。

一方で、アウトプットとアウトカムの捉え方のベースとなる考え方は共通しています。統合報告書の作成にあたっての指導原則や内容要素を示した国際的な指針「国際統合報告フレームワーク」では、それぞれの基本的な定義が示されています。

国際統合報告フレームワークではどう考えているのか

アウトプットとアウトカムは、次のように定義されています。

  • アウトプット:組織の製品及びサービス、副産物及び廃棄物
  • アウトカム:組織の事業活動とアウトプットの結果としてもたらされる資本の内部的及び外部的影響(正と負の両面について)

ここでいう資本とは、企業価値の源泉となる「財務資本」「製造資本」「知的資本」「人的資本」「社会・関係資本」「自然資本」の6つの資本を指します。

内部的なアウトカムの例としては、従業員のモラル、組織の評判、収益及びキャッシュ・フローなどが挙げられます。一方、外部的なアウトカムには、顧客満足度、納税、ブランドロイヤリティ、社会・環境への影響などがあります。また、アウトカムには価値を創造する正の側面だけでなく、価値を毀損する負の側面も含まれます。

例えば、あるメーカーが省エネ性能の高い産業機器を開発したとします。

この場合、

  • 事業活動:研究開発の推進、製造設備の導入
  • アウトプット:省エネ性能の高い産業機器をリリース
  • アウトカム :顧客のエネルギーコスト削減に寄与、顧客のCO2排出量の削減、顧客満足度の向上、売上・利益の増加

という整理になります。

研究開発や設備投資などの事業活動によって、省エネ性能の高い産業機器というアウトプットが生み出され、その結果として顧客や社会、自社にもたらされた変化や影響がアウトカムです。統合報告書では、こうしたアウトプットとアウトカムのつながりを通じて、企業がどのように価値を生み出しているのかを示すことが求められます。

国際統合報告フレームワークの価値創造プロセスの概念図

投資家が知りたいのは「その結果、何が変わったのか」

では、実際に投資家はどのような価値創造ストーリーを評価しているのでしょうか。そのヒントとなるのが、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がこれまで公表してきた「優れた統合報告書」の評価コメントです。2026年から評価基準は見直されていますが、価値創造ストーリーの考え方を理解するうえでは、2025年までの評価コメントも参考になります。

そこから読み取れるのは、投資家が企業に対して、

  • 価値創造の流れを分かりやすく示すこと
  • 非財務情報と財務情報のつながりを説明すること
  • ビジネスモデルや競争優位性を理解できるようにすること
  • 自社らしい価値創造ストーリーを描くこと

を期待しているという点です。

つまり、投資家が知りたいのは、「施策を実施した」「KPIを達成した」という事実そのものではありません。その施策によって、顧客や社会にどのような価値が生まれ、その結果として自社の競争力や企業価値がどのように高まったのかという因果関係です。

これは、国際統合報告フレームワークが示す「アウトプット」と「アウトカム」の考え方にも通じています。製品やサービスを生み出したこと(アウトプット)だけでなく、それによって顧客や社会、自社にどのような変化が生まれたのか(アウトカム)まで示して初めて、価値創造ストーリーとしての説得力が高まります。

では、実際に企業はアウトプットとアウトカムをどのように整理し、自社らしい価値創造ストーリーを表現しているのでしょうか。次章では、各社の事例を見ながら、その違いを紹介します。

各社はアウトプットとアウトカムをどのように整理しているのか

実際に各社の統合報告書を見ると、アウトプットとアウトカムの整理には、それぞれの企業らしい工夫が見られます。

ウシオ電機株式会社

アウトプットを「事業活動の成果」として位置付け、その先に生まれるアウトカムを「顧客価値」と「社会価値」に分けて整理しています。

株式会社三越伊勢丹ホールディングス

アウトプットを百貨店事業、不動産事業、金融事業などの事業を通じて提供される商品・サービス、アウトカムを顧客、従業員、取引先、地域社会といったステークホルダーとの関係性の変化として整理しています。

積水化学工業株式会社

アウトプットを製品やサービスなどの成果だけでなく、環境負荷などの負の側面も含めて整理しています。正・負の両面を価値創造ストーリーに組み込むことで、より実態に即した企業活動を表現しています。アウトカムを社会価値・財務成果・非財務成果として整理しています。

株式会社イトーキ

アウトプットをソリューション・サービスとして、アウトカムを売上や利益などの財務成果だけでなく、人的資本や顧客価値などの非財務成果も合わせて示しています。事業活動がどのように企業価値の向上につながったのかを、財務・非財務の両面から整理することで、価値創造の全体像を分かりやすく伝えています。

このように見ていくと、アウトプットとアウトカムの表現や整理の方法は企業によってさまざまです。

一方で、その背景にある考え方は共通しています。各社とも、事業活動によって生み出された価値と、その結果として生じた変化や影響を伝えようとしている点です。

重要なのは「どの整理が正しいか」ではなく、自社の事業活動がどのような価値を生み出し、その価値が顧客や社会、自社にどのような変化をもたらしているのかを、一貫したストーリーとして伝えられているかという視点です。

自社らしさを可視化する価値創造ストーリーの設計へ

アウトプットとアウトカムの検討は、単なる情報の棚卸しではありません。自社がどのように価値を生み出し、その価値が顧客や社会、そして自社にどのような変化をもたらしているのかを明らかにするプロセスです。

そこには、経営理念や長期ビジョン、競争優位性、マテリアリティなど、その企業ならではの価値創造に対する考え方が表れます。

  • 私たちは何を生み出している企業なのか
  • その結果、顧客や社会、そして自社にどのような変化をもたらしているのか
  • その価値は、将来の企業価値へどのようにつながっていくのか

これらを経営陣や関係部門との対話を通じて整理し、言語化していくことが、統合報告書の土台づくりになります。

ブレーンセンターでは、価値創造ストーリーの設計・構築から、価値創造モデルの作成、統合報告書制作まで、一貫して伴走しています。

アウトプットとアウトカムをどう整理すれば、自社の価値創造は伝わるのか。その答えは企業ごとに異なります。私たちは、貴社ならではの価値創造を整理し、伝わるストーリーとして形にします。