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ブレーンセンターの「視点」

BCプランナーが解説!統合報告書のポイント5選投資家とのコミュニケーションを活性させる工夫とは

ここ数年、統合報告書の発行企業は急増しています。さらに、企業の情報開示に対する外部要請は多様かつハイレベルになっており、それに応じて統合報告書に盛り込む情報量も膨大になっています。

「発行企業数」と「1冊あたりの情報量」が増加するなかで、他社との差別化を図り、ステークホルダーから“もっと注目される”統合報告書として独自の工夫を凝らす企業が出てきています。その工夫の一つが、「ステークホルダーの関心に端的に応える」こと。今回はその工夫を、当社のプランナーが解説します。

※本記事でご紹介している事例は、当社の実績でないものも含まれます。

ポイント1:インデックスで、読者を読んでもらいたいコーナーへ誘導

膨大な情報量からステークホルダーが求める情報にたどり着きやすいよう、冊子の冒頭で「ステークホルダーからの質問に、どのページで答えているか」をわかりやすくまとめている事例です。

株式会社レゾナック・ホールディングス

レゾナック・ホールディングスの統合報告書は、目次ページに「ココを読めばコレがわかる!」というコーナーを掲載。「何はともあれ、CEOってどんな人?」などのカジュアルな表現を添えて、特に読んでもらいたいページをピックアップしています。このほか、読者からよく質問を受ける情報の掲載位置も明記されており、統合報告書を“読みたくなる”仕掛けがなされています。

旭化成株式会社

旭化成の統合報告書は、全体が「投資家から寄せられた質問」を軸として構成されているのが特徴的です。「投資家の皆さまからの疑問に、真正面から向き合う」をコンセプトとして、同じ軸で構成した前年版に寄せられた意見を踏まえ、さらなる「問い直し」としてあらたに6つの問いを設定。それらをそのまま章として展開しています。全体を順に読み進めていくのも良し、あるいは関心のある問いだけを読むのも良し――どちらの読み方もできる、“投資家ファースト”を貫いた統合報告書であるといえます。

ポイント2:注目度の高い「社長メッセージ」は、テーマを絞る

投資家をはじめ、読者がまず着目するのは社長メッセージであると言われています。そうした背景からか、“あれもこれも言っておかないと”と内容が詰め込まれ、散漫になって伝わりづらいメッセージもよく見られます。ここで紹介するのは、しっかりとステークホルダーの関心事にフォーカスした社長メッセージの例です。

TDK株式会社

TDKの「TDK United Report 2025」では、CEOメッセージが「ポートフォリオマネジメント」「成長領域への投資」「未財務資本の強化」などのQ&Aを中心に展開されています。同社は2024年に長期ビジョンとそこからバックキャストした中期経営計画を策定しており、今回の統合報告書はその初年度を終えた年の発行。その進捗や今後の方針に注目が集まるタイミングであることから、社長メッセージもそのポイントに焦点が当てられています。

三菱商事株式会社

三菱商事も、成長戦略にフォーカスし、そのうえで「ポートフォリオへの評価と今後の打ち手」や「コングロマリットバリュー実現への意気込み」について厚く説明する構成となっています。多角的な事業を展開している同社の特性とそれに対するステークホルダーからの期待を強く意識していることが感じとれます。また、社長メッセージの直前に位置する扉ページに「皆さまのご関心事項にお答えいたします」とはっきり記載されているのも目を引きます。

ポイント3:「経営資本と企業価値向上のつながり」を解説

昨今、企業価値の向上に欠かせないものとして、非財務資本(無形資本)への注目度が高まっています。「非財務資本をどのように強化し、企業価値向上につなげるのか」が問われるなかで、それに対する回答をわかりやすく丁寧に説明している事例です。

株式会社デンソー

デンソーの統合報告書では、5つの非財務資本(人的資本、知的資本、製造資本、自然資本、社会・関係資本)について、それぞれの現状分析や強化策が丁寧に説明されています。そして、非財務資本ごとに「インパクトパス」を作成。それらがどのように価値創造につながるのか図に表すことで可視化しています。

ANAホールディングス株式会社

ANAホールディングスは、非財務資本のなかでも人的資本を最重要と位置づけ、価値創造の源泉かつ原動力であると捉えています。人的資本と財務価値や企業価値との結びつきを可視化する「価値関連性分析」の結果をもとに、人財戦略と経営戦略を連動させた考え方や施策を精緻に説明。また、「人財への投資を起点とした価値創造サイクル」や「付加価値創造に重点を置いた生産性向上」など、統合報告書全体で、人的資本と企業価値向上とのコネクティビティに徹底的にこだわった構成がとられています。

ポイント4:特徴的なビジネスモデルを丁寧に説明

足下の業績を適正に評価したり、中長期的な成長戦略を深く理解してもらうためには、前提として自社のビジネスモデルを知っておいてもらう必要があります。ビジネスモデルそのものに特徴がある企業のなかには、統合報告書に説明を掲載し、読者の理解を補っている例もあります。

日本ペイントホールディングス株式会社

日本ペイントホールディングスは、持株会社として「株主価値最大化(MSV)」を経営上の唯一のミッションとして掲げ、それに向けて独自の「アセット・アセンブラー」モデルを展開しているのが大きな特徴です。統合報告書では、冒頭でこのモデルの考え方を解説しているほか、それに対して投資家から寄せられる質問に回答するページも設けられています。

株式会社 荏原製作所

5つのカンパニーで事業を展開する荏原製作所の統合報告書では、「事業戦略」を説明する章で、事業ごとに商流を図解するとともに、その特徴を簡潔にまとめています。この説明があることで、初めて読む読者は基礎理解をしたうえで戦略を読み解くことができます。また、継続的にウォッチしている読者にとっても、おさらいのような位置づけとなり、理解の助けになります。

ポイント5:事業・業界の特性から重要なテーマに特化したコンテンツを掲載

投資家が投資判断をするうえでは企業の事業や属する業界の特性なども重要な判断材料になり得ます。そのような情報をしっかりと理解してもらうため、統合報告書のなかで重点的に説明するページを設けるケースも見られます。

日本ペイントホールディングス株式会社

中国を主力市場とする日本ペイントホールディングスは、自社の株価が実際の業績よりも中国のニュースフローに左右されてしまう傾向を踏まえ、統合報告書において、「中国のマクロデータがそのまま自社の業績につながるものではない」という主張を明確に述べ、その根拠を丁寧に説明しています。

もっと「コミュニケーションに役立つ統合報告書」をめざすために

各企業の統合報告書における工夫をご紹介しました。

ステークホルダーの関心に応える統合報告書を制作し、それをもとに対話することで新たな関心を把握でき、その新たな関心が次の統合報告書のテーマになる――当社では、この好循環を生むことが、ステークホルダーからの評価と企業価値の向上につながるのだと考えています。

好循環の起点となる統合報告書づくりを、当社も全力でご支援します。ぜひ、お気軽にご相談ください。