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ブレーンセンターの「視点」
統合報告書のトレンド(2024年版)地味に気になる「タテヨコ」の傾向を調査

自社の成長戦略とサステナビリティ戦略を訴求する広報物である「統合報告書」。2023年に、その発行企業は1,000社を超えました。当社も統合報告書の制作をご支援するなかで、コンテンツだけでなく、「判型」についてもご相談をいただくことが増えました。そこで、「第4回 日経統合報告書アワード」の参加企業496社を対象に、統合報告書の判型の傾向を調査しました。
依然としてタテ型が多いが、ヨコ型も3割に
結果は、表1の通りです。全体としては、「タテ型」で発行している企業が多数派を占める一方、「ヨコ型」も3割に達しています。ちなみに、ヨコ型を発行している企業のなかでも、「A4ヨコ」サイズの統合報告書が多く、「16:9のワイドサイズ」は約6%とまだまだ少ないようです。
さらに入賞企業の60社についても調査しました(表2)。こちらは、ヨコ型が5割を超え、タテ型を上回る結果となりました。先進的な情報開示を行っている企業ほど、ヨコ型への移行が進んでいると言えそうです。
表1:「日経統合報告書アワード2024」に参加した企業の統合報告書の判型
判型 | 社数(社) | 比率(%) |
---|---|---|
タテ型(A4) | 328 | 66.1% |
ヨコ型(A4) | 139 | 28.0% |
ヨコ型(16:9) | 28 | 5.6% |
その他(ウェブ形式) | 1 | 0.2% |
表2:「日経統合報告書アワード2024」入賞企業の統合報告書の判型
判型 | 社数(社) | 比率(%) |
---|---|---|
タテ型(A4) | 27 | 45.0% |
ヨコ型(A4) | 27 | 45.0% |
ヨコ型(16:9) | 6 | 10.0% |
その他(ウェブ形式) | 0 | 0.0% |
タテ型とヨコ型、それぞれのメリット
では、判型をタテ型にするのか、ヨコ型にするのか、どのような基準で考えればよいのでしょうか。それぞれのメリットを下記にまとめました。
- 見開き2ページ分を使った誌面で、多くの情報を一望させることができる
- トップメッセージなど、ストーリー性のある長文の原稿を読むのに適している
- 印刷物として最も標準的な判型で取り扱いやすい

見開き全体(A3サイズ)を活用してレイアウトされている例(稲畑産業株式会社様「統合報告書2024」)
https://www.inabata.co.jp/themes/inabata/investor/library/integrated_report/file/integrated_report2024.pdf
- パソコンやタブレットなどでの閲覧に適している
- ウェブのようなナビゲーション(インデックス)をつけることで、ページの遷移・参照がしやすい
- 決算説明会資料など、ヨコ型で作られるプレゼン資料との親和性が高い
PDFにリンクを埋め込んで、読みたい記事をクリックしながら読み進めていくことを想定する場合は、ヨコ型のほうがおすすめです。また、A4よりもさらにワイドな16:9等の判型の場合、ナビゲーションのエリアも確保できるため、さらに検索性・閲覧性を高める工夫も可能です。

A4サイズの記事エリアの左側にナビゲーションを設置。(三菱ケミカルグループ様「KAITEKIレポート2023」)
https://www.mcgc.com/ir/library/assets/pdf/23.pdf
また最近は、ウェブでスクロールして閲覧することを意識した、複数ページが縦につながるデザインも増えています。

Aタテのつながりを意識したダイナミックなデザインの例(日本航空様「JALグループ報告書2024年3月期」)
https://www.jal.com/ja/sustainability/report/pdf/index_2024b.pdf?20240930
適切なページ数とは
ちなみに、判型と並んで相談を受けることが多いのは、適切な統合報告書のボリューム(ページ数)です。企業が外部から開示を求められる情報が増える一方で、読者が分かりやすい、見やすいレポートとするにはどうしたらよいか悩まれる方も多いかと思います。判型と同じくボリュームについても、「日経統合報告書アワード2024」の参加企業496社の傾向をまとめてみました。その結果、一番多いのは71-80ページで約18%(88社)。次いで81-90ページで16%、91-100ページ約13%と続き、合計で約半数近くの企業が71-100ページの範囲に入ります。
表3:「日経統合報告書アワード2024」参加企業のページ数の分布
ページ数 | 社数(社) | 比率(%) |
---|---|---|
60ページ以下 | 61 | 12.3% |
61-70ページ | 54 | 10.9% |
71-80ページ | 88 | 17.8% |
81-90ページ | 79 | 16.0% |
91-100ページ | 66 | 13.3% |
101-110ページ | 56 | 11.3% |
111-120ページ | 36 | 7.3% |
121ページ以上 | 55 | 11.1% |
入賞企業60社にしぼって調査すると下記の結果になりました。一番多いのは121ページ以上の25%(15社)、次いで91-100ページの20%(12社)です。入賞を狙うには90ページ以上の情報量があるのが望ましい、と言えそうです。一方で、60ページ以下でも入賞しているケースもあります。注力する「社会イノベーション事業」による価値創造戦略にテーマを絞ることで大胆にページ数を減らした日立製作所様(106ページから53ページ)も受賞しているため、統合報告書以外の開示メディアを明示し、適切に必要な重要情報を提供できれば評価は下がらない、と言えそうです。
表4:「日経統合報告書アワード2024」入賞企業のページ数の分布
ページ数 | 社数(社) | 比率(%) |
---|---|---|
60ページ以下 | 3 | 5.0% |
61-70ページ | 3 | 5.0% |
71-80ページ | 5 | 8.3% |
81-90ページ | 6 | 10.0% |
91-100ページ | 12 | 20.0% |
101-110ページ | 10 | 16.7% |
111-120ページ | 6 | 10.0% |
121ページ以上 | 15 | 25.0% |
誰に、どんな場面で読んでもらいたいかを第一に
いかがでしたか。良い統合報告書をつくるにはコンテンツの内容が重要なのはさることながら、読者や閲覧環境も意識してみることも大切です。統合報告書を介して、書き手(企業)と読み手(投資家をはじめとするステークホルダー)とのコミュニケーションのお役に立てるよう、ブレーンセンターでは今後も記事を発信していきます。この記事が皆さまの統合報告書の仕様(判型・ボリューム)を決める際の参考になれば幸いです。