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サステナビリティ・CSR広報

サステナビリティ経営のカギは、
多様性(ダイバーシティ)コラボレーション

北海道大学 産学・地域協働推進機構 特任講師
椎名 希美

掲載日:2021年11月30日

02事業を通じた社会課題解決に必要なこと
~多様なステークホルダーとのコラボレーション~

価値共創とオープンイノベーション

前述したように、現在は知識社会が到来し、知識と知識を連携させ、取り込み、組み合わせることで爆発的なパフォーマンスを上げる創造とコラボレーションの時代であると言えます。そのような時代において筆者が特に注目しているのは、様々なステークホルダーとの価値を創り出していくコラボレーション活動です。

初めに、価値は企業から消費者に一方的に提供されるのではなく、企業と消費者が相互作用を通じて主体的に価値創造に関与するという価値共創(cocreation of value)の発想が挙げられます(Grönroos2008; Prahalad and Ramaswamy 2004a; Vargoand Lush 2004)。価値共創を中心概念とするサービス・ドミナント・ロジック[無形財である事業(コト)や有形材である商品・製品(モノ)をすべて「サービス」として包括的にとらえる視点のこと]でも「顧客はつねに価値共創者である」と捉えられているように、価値共創では、消費者は積極的に価値を創出する主体として位置づけられます(Payne, Storbacka, and Frow 2008; Prahalad and Ramaswamy 2004a; Vargo and Lusch 2004)。

  • 参照:「小売業における価値共創 〜経験価値のマネジメント〜」近藤公彦、マーケティングジャーナルvol.32No.4、2013

実践例として、Uber(スマートフォン・ベースのハイヤー配車アプリケ-ション)やWaze(ユーザー同士がリアルタイムの渋滞情報や道路状況をシェアするソーシャル・カーナビゲーション)、無印良品、ウェザーニュースといった企業が挙げられるでしょう。無印良品では「LED持ち運びできるあかり」や「自立するフローリングモップケース」など開発段階から顧客の声を反映した商品が幾つもあります。他にも「素のままポテトチップス」として味付けをしないじゃがいもの味だけで勝負する商品を投入。黒こしょう、コンソメ、カレーなど8種の「味付けパウダー」を同時発売し、顧客が味を自由に考えられる工夫を凝らしていました。そして、ネットストア上で顧客が「美味しい食べ方」や「郷土の味」を投稿できる仕組みを設け、アイデアを集めると共に参加型の製品開発を実現し、ヒット商品となりました。このような企業に見られるように、顧客と共に「価値づくり」を行っている企業は今後ますます増加していくでしょう。

  • 参照:2014年7月23日HBR『サービスウェザーニュースジック 先進企業事例に見る「価値づくり」の世界観』、2014年7月24日HBR『〈素のままシリーズ〉と〈ゲリラ雷雨防衛隊〉良品計画とウェザーニュースに見る価値共創』藤川佳則 一橋大学大学院国際企業戦略研究科(ICS)准教授

他にも、オープンイノベーション(Open Innovation)という概念が Chesbrough(2003)によって提唱され、実務的世界や学術界においても広く浸透してきています。オープンイノベーションは「組織内部のイノベーションを促進するために、意図的かつ積極的に内部と外部の技術やアイデアなどの資源の流出入を活用し、その結果、組織内で創出したイノベーションを組織外に展開し市場機会を増やしていくこと」と定義されています。社内外を問わず、アイデアを組み合わせて新たな社会的価値を創造し発信することと捉えることも出来るでしょう。大学とのコラボレーションによる共同研究、スタートアップ、ベンチャー企業や他企業とのコラボレーションなど様々な事例が挙げられます。オープンイノベーションのパフォーマンスに影響を与える要因としては、組織内部の要因としてIT技術への理解度や知識を吸収する能力などが挙げられています。そして、組織外部の要因として人々の繋がり(社会的相互作用紐帯)は、職場の仲間関係など強い繋がり、知人の知人など弱い繋がりのどちらにおいても、イノベーションの遂行にポジティブな刺激を与えることも明らかとなっています。

  • 参照:オープンイノベーションのパフォーマンスの先行要因研究、趙夢茹

キーワードは多様性

このような消費者や顧客とのコラボレーションによる価値共創、社内外とのコラボレーションによるオープンイノベーション、どちらにも共通していることとして“多様性”が挙げられるでしょう。どちらにおいても、社内のみのリソースを活用するのではなく、外部との連携により、自分たちとは異なる視点や能力を取り入れ発展していくところが特長と言えます。アメリカの経済学者チャド・スパーバーの調査によれば、司法業務、保健サービス業務、金融業務において、職員の人種的多様性が平均から1標準偏差上がっただけで、25%以上生産性が高まったといいます。また、コンサルティング会社のマッキンゼーがドイツとイギリスの企業を対象に行った分析では、経営陣の人種及び性別の多様性の豊かさが上位4分の1に入っている企業は、下位4分の1の企業に比べて自己資本利益率が66%も高いという結果を出しています。

多様性とただ一口にいっても様々な種類が挙げられます。例えば、性別、人種、年齢、信仰などの違いは「人口統計学的多様性」としてよく分類され、ものの見方や考え方の違いは「認知的多様性」として捉えることが出来ます。類似した考え方、バックボーンを持つ人のみで構成された集団では、知識が重なり合う部分が大きく、ものの見方や考え方の枠組みが似ており、認知的多様性が低い傾向があるでしょう。その結果、潜在的にあった固定観念をより強固にしてしまい、質の高い解決策を導くことを難しくしてしまうのです。例えそれが誤った意見だったとしても、集団の視野を広げて発想を刺激することは新たなアイデアを生むきっかけに繋がります。特に企業という組織においては、「知識のクラスタリング」(知識の似たもの同士が集合化する現象)が起きやすく、加えて、最初は多様性が豊かな集団だったとしても、そのうち集団の中の主流派や多数派に引っ張られて結局みな画一的な考え方になってしまうことが懸念されます。その結果、同じ組織に長い間いると、みな代わり映えしない考え方になってしまうというリスクがあります。特に、集団と異なる意見を述べることを自分の地位に対する脅威と捉える環境では、多様な意見は益々出にくくなるでしょう。様々な意見を自由に交換させることで、業界や立場をこえた知識と知識、アイデアとアイデアの融合が起き、新たなイノベーションへと繋がっていくと考えられます。

先が読めないVUCAの時代において、もっとも正解を導き出すのが困難と考えられる環境・社会課題解決を自社の事業と共に融合させ経済発展を続けていくには、多様性によるコラボレーションがその1つのカギとなるのではないでしょうか。

  • 参照:2021年6月『多様性の科学』マシュー・サイド著

Profile

北海道大学 産学・地域協働推進機構 特任講師
椎名 希美
2008年に北海道大学医学部を卒業し、診療放射線技師として救急病院で勤務する傍ら、小樽商科大学のビジネススクールに通いMBA(経営管理学修士)を取得。2014年に株式会社リクルートキャリアに入社しリクルーティングアドバイザーを務める。2016年にSNSマーケティングや6次化商品開発を行うベンチャー企業を設立。2017年より小樽商科大学の学術研究員として文科省次世代アントレプレナー育成事業(Edge-Next事業)を担当し、2020年からは北海道大学の特任助教として勤務。2020年7月より現職。

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