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サステナビリティ・CSR広報

サステナビリティ経営のカギは、
多様性(ダイバーシティ)コラボレーション

北海道大学 産学・地域協働推進機構 特任講師
椎名 希美

掲載日:2021年11月30日

03具体的な方策としての提言
~「Z世代」とのコラボレーションの必要性とその方法~

Z世代の可能性

前述したように、多様性によるコラボレーションはサステナビリティ経営を推進するにあたり、重要な1つのカギに成り得ると考えます。筆者が特に注目している多様性は、若年層いわゆる「ミレニアル世代」や「Z世代」です。もともとアメリカでは、1960~70年代に生まれた人をX世代、通称「ジェネレーションX」と呼んでいました。その後、約10年単位で誕生する次世代をアルファベット順に呼び、Xの次をミレニアル世代であるY世代、そして1990年後半~2000年代に生まれた人をZ世代と表現しています。特にZ世代の特徴として、物心がついたときから、すでにデジタル技術が発達しており、インターネットやオンラインの世界に慣れ親しみ、主なコミュニケーションはSNSを活用するなど、ライフスタイルの中心にデジタル技術が存在していることが挙げられます。また従来型のFacebookやTwitterなど誰でも参加できるSNSから距離を置き始め、より閉鎖性の高いプラットフォームで熱狂的なコミュニティを構築している点も新しいと言えます。例えば、ゲームのフォートナイトや、ゲームプラットフォームのロブロックスの中で有名アーティストのコンサートが実施されることや、ゲーマーがゲームプレーのライブ配信を通じて収益化とフォロワー集めができるプラットフォームであるツイッチ(Twitch)、テキスト・音声・動画のメッセージを通じてつながり合うための場であるディスコード(Discord)などの利用者数が増加しているという現象は、繋がりをどう築くのかということに加えて、カルチャー全般をどのように体験し形成するのかについて、その手法も大幅に変化していると言えます。また、参加者はお金やキャリアに保守的であり、個性や自分らしさを重視している点なども特徴的であると言えます。

さらに、イノベーションをテーマに事業や企業とのコラボを行う学生によるチームdotが主導するメディア「Z世代会議」を見ても、「社会に貢献する活動に取り組みたい」と考える16歳~21歳が多く、情報アクセスが世界中にできる時代に育った彼らは、社会問題への関心が高いソーシャルネイティヴやSDGsネイティヴであるとも言われています。彼らは、まさに20~30年後の社会のメインプレーヤーであり、時代の中心となっていく世代です。彼らが今現在どのような理想を描き、どのような課題と向き合う必要があると、なぜ感じているのか、その考えやコンテキストを知ることは、これからの経営にとって重要な要素となっていくでしょう。「学生だから何もわかっていないでしょう?」「若いから物事をよく知らないでしょう?」という考えは古い考えであり、彼らの背景には世界と繋がる情報プラットフォームが構築されています。事実、現在主流となっているGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazonの頭文字をとった総称)の創業者たちが起業したときの平均年齢は24歳です。変化の激しい時代においては、専門的な知識や体験の積み重ねである経験知だけでは足りず、柔軟な発想力が必要となっています。科学史家のトーマス・クーンの著書『科学革命の構造』の中では「本質的な発見によって新しいパラダイムへの転換を成し遂げる人間のほとんどが、年齢が非常に若いか、あるいはその分野に入って日が浅いかのどちらかである」と述べられています。つまり、歴史的なインパクトのある大きな変革というのは、若年層や専門的な知識がない人によって実現されており、業界の常識やフレームワークを知らないからこそ生まれる発想が極めて重要であることを意味していると言えるでしょう。

Z世代とのコラボレーションを促進することは、サステナビリティ経営において20~30年後を見据えた視点で本質的な物事を考えるために、必要なことであると考えます。

  • 参照:HBR Where Brands Are Reaching Gen Z, March 11, 2021/ソーシャルネイティヴの「いま」と「本音」を知るメディア│Z世代会議/“オッサンの経験知”が通用しない時代が到来 山口周氏が語る、年長者と若手のあるべき関係性 ログミ-Biz 2021年10月25日閲覧

1つの選択肢としての産学連携

Z世代とのコラボレーションを実現しようとしたときに、例えばインターンシップや共同プロジェクトを立ち上げるなどいくつかの選択肢が挙げられるでしょう。その1つの選択肢として、産学連携があります。筆者が所属する北海道大学では、企業と学生のコラボレーションを促進できる場としてDEMOLA(デモーラ)プロジェクトを実施しています。EMOLAは企業人と学生が一緒にチームを組み、2か月間かけて企業にとっての新たな価値創造へと繋がるビジネスアイデアを練り上げる、イノベーション共同創造促進プログラムです。DEMOLAはフィンランドのタンペレ大学を中心に10年以上前に始まったプログラムで、現在は世界16カ国、60以上の大学で導入されており、日本では北海道大学が2018年に初めて導入しました。DEMOLA HOKKAIDOでは、約3年半をかけて25社28課題に取り組んでいます。これまでに参加した学生は、北海道大学をはじめ小樽商科大学、東京理科大学、東北大学や神戸大学など様々な地域の19大学から集まり、延べ190名にも上っています。2020年度からはフルオンラインでの開催体制も整えたことから、海外在住の学生の参加も実現しました。このように、大学や学部を超えて、年齢や志向のことなる学生が集まり、一つのゴールに向かってチームビルディングを行い、より良いアイデア創出へと突き進んでいく様は、これまでにはなかった一体感と化学反応をもたらしています。

DEMOLAは有償のプログラムとなっていて、参加を希望した企業や自治体と共に北海道大学のファシリテーターが課題を作成します。作成される課題は、新規事業開発や商品・サービスの開発、マーケティングリサーチなど様々です。(例:「-地球と親和性の高い酪農の姿を描く―酪農のリジェネラティヴ・デザイン」「これからの旅は、どう進化すべきだろうか?「世界遺産・知床」が創る、新たな旅の概念」「人が“良く生きる”ために必要なものは、何だろうか?113歳の自分へ」等、HPに掲載 )

学生のみではなく、企業担当者、そしてファシリテーターが入ることで、企業の専門的な知識の共有、問題解決に向けた発想力を、多様性をもって高めることが出来るでしょう。一番重要なことは、一般的に行われているビジネスコンテストなどと異なり、企業と学生が一緒になってアイデアを創造することです。これにより、アイデア創出のプロセス、価値観そのもの全てを共有できます。デザインシンキングの手法をベースにチームでアイデアを創造し、課題提供企業がアイデアの有効性を認めた場合には、そのアイデアを利用するためのライセンスをチームから受け、事業化へとつなげていきます。現在、ライセンス率は72%にも上り、多くのビジネスアイデアが生まれています。

DEMOLAは多様性のコラボレーションを実現する1つの事例ではありますが、このように意識的にZ世代等の若年層とコラボレーションを行う機会を獲得していくこと、その重要性に対する理解を深めることが、現代では強く求められていると考えます。

DEMOLA HOKKAIDO 参加メンバースナップ

オンライン会議の様子

Profile

北海道大学 産学・地域協働推進機構 特任講師
椎名 希美
2008年に北海道大学医学部を卒業し、診療放射線技師として救急病院で勤務する傍ら、小樽商科大学のビジネススクールに通いMBA(経営管理学修士)を取得。2014年に株式会社リクルートキャリアに入社しリクルーティングアドバイザーを務める。2016年にSNSマーケティングや6次化商品開発を行うベンチャー企業を設立。2017年より小樽商科大学の学術研究員として文科省次世代アントレプレナー育成事業(Edge-Next事業)を担当し、2020年からは北海道大学の特任助教として勤務。2020年7月より現職。

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