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投資家向け広報(IR支援)

議決権行使の動向から見えてくる
日本企業におけるガバナンスの課題とは?

Hermes (ハーミーズ)EOS
エンゲージメント担当
アソシエート・ディレクター
鈴木 祥

掲載日:2019年11月11日

03ガバナンス改善に向けた提言

ガバナンスの体制は国ごとに異なり、どの形が最適ということは難しい。日本企業は日本独自のやり方で成功を成し遂げてきたという見方もあり、欧米流の考えを反映させることに抵抗を持つ向きもある。しかしながら、少子高齢化などで日本国内の市場が縮小する中、日本企業は海外事業の展開をより一層進め、金融や株式市場の国際化も進む一方であることを踏まえると、やはり世界に受け入れられる体制を整えることが必要である。

まず、取締役会は経営陣を監督する役割を担うということを強く認識し、そのために独立性を一層高めることが必要である。同時に、より効果的な意思決定のためには広義での多様性が必要であり、女性の登用はもちろんのこと、国際的な視点や他業種の経験者などを加えることで、取締役の有効性が改善されるであろう。女性役員を選任するハードルとして、人材不足がよく挙げられるが、これは暗黙の年齢制限を設けていることが大きな要因ではなかろうか。年功序列にこだわらず、若くて優秀な人材を候補とすれば、女性候補のプールが広がるだけでなく、取締役会における年齢の多様性も生まれる。

政策保有株に関しても、上記に述べた通り様々な弊害がある点を踏まえ、保有の意義を抜本的に考え直し、解消に向けての努力を一層進めて頂きたい。いわゆる「持たされている」状況にある企業に対しては、コーポレートガバナンスコードも、政策保有株の売却を妨げることを禁じている点を強調したい。万が一、政策保有を当面継続する必要があると判断するのであれば、その理由について具体的に説明をし、保有株式について議決権行使結果を開示するなど、透明性を高めることで、投資家の懸念を和らげることも可能であろう。

役員報酬については、企業の長期的な持続性を促すような設計にし、特に変動部分については、どういった指標に連携しているのか、また目標に対する達成度に基づいて支払われる水準などについて詳細な説明が求められる。財務面での業績のみならず、環境、社会、ガバナンス(ESG)といった長期的な要素も考慮して決定されることが望ましい。さらには、変動部分だけでなく固定給の一部も譲渡制限株式で支払うなどして、経営陣の株式保有を増加させることにより、株主との利益の一致が図れる。

最後に、こういった様々なテーマについて、経営トップだけでなく独立社外取締役が積極的に株主らと対話を持つことが重要である。弊社も日本企業の社内役員と直接対話を持つ機会が増えていることは歓迎するが、独立社外取締役との対談の機会は限られている。例えば、既に英国などでは頻繁に行われているように、取締役会の構成については指名委員会の委員長、役員報酬に関しては報酬委員会の委員長が投資家と対話をするといった機会を増やすことで、より専門的かつ有効な議論をすることが可能になり、企業にとっても有用であろう。

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