投資家向け広報(IR支援)
企業の信頼性を高める統合報告の可能性
~統合思考のススメ~
RIDEAL代表 三代 まり子
掲載日:2015年3月19日
02統合報告が求められるようになった背景とは?
統合報告が求められるようになった背景には、「短期志向の是正」「開示情報の乱立の回避」「資本概念の拡大への対応」といったいくつかの要因があります。とりわけ重要なのは、「短期志向の是正」です。
現在、統合報告は国際的な開示のトレンドになりつつあります。これほどまで国際的な動きに発展したことの最大の要因に、2008年の金融危機があげられます。財務情報を中心とする従来型の開示が、投資家の短期志向を促進し、短期の企業評価が金融危機を招いた一つの理由として指摘されています。
また、このような投資家の短期的思考が同時に企業側の経営の短期志向を促すことになった点は、イギリスのKay Review※というレポートの中で指摘されています。2001年のエンロン事件に引き続き、2008年の金融危機によって再度企業情報への信頼性が低下してしまったと言えます。
そこで、企業に対する信頼を回復するためには、投資家だけでなく企業において、「短期志向」を是正する必要が高まりました。具体的には、企業の価値創造活動の全体像を長期の時間軸で捉える思考(「統合思考」と呼ばれています)と、適切に伝達できるコミュニケーションプロセスが重要です。「統合報告」とは、このコミュニケーションプロセスを指しています。
※“THE KAY REVIEW OF UK EQUITY MARKETS AND LONG-TERM DECISION MAKING”2012年7月
Profile
- RIDEAL代表 三代 まり子
- 2011年に独立(http://www.rideal.org)。統合報告コンサルティング、KPI ファシリテーションを行っている。米国公認会計士。
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- 2005年~2010年:新日本有限責任監査法人にて会計監査、調査研究などを担当。知的資本・資産イニシアチブ(WICI)にて日本の製薬、自動車、電子部品産 業のKPI開発に従事。
- 2011年~2013年:国際統合報告評議会(IIRC)にて、主にテクニカル・マネージャーとして企業報告に関する国際的な開示の枠組み(国際統合報告フレームワーク)およびConnectivity Background Paperの開発に従事。また、リレーションシップ・マネージャーを兼務し、日本国内およびアジアでの統合報告の展開を担当。
- 2014年4月~現在:早稲田大学商学学術院総合研究所WBS研究センター招聘研究員。