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投資家向け広報(IR支援)

企業の信頼性を高める統合報告の可能性
~統合思考のススメ~

RIDEAL代表 三代 まり子

掲載日:2015年3月19日

04統合報告に重要な思考

統合報告というプロセスを開始するためには、次に挙げる3つの重要な考え方が必須となります。

ア)統合思考

まず、「統合思考」は、統合報告を行う上で重要な土台となる考え方です。これまでの企業開示から、さらに進化したものにしていくためには、開示内容を変えるだけではなく、根本的な思考そのものを変えていく必要があります。

国際統合報告評議会(IIRC)から発行されている国際統合報告フレームワークでは、統合思考について次の説明があります。「統合思考は、組織内の様々な事業単位及び機能単位と、組織が利用し影響を与える資本との間の関係について、組織が能動的に考えることである。統合思考は短、中、長期の価値創造を考慮した、統合的な意思決定と行動につながる。」

下記のように従来型の考え方(短期志向)と比較すると、統合思考とは、より包括的に企業の価値創造のあり方を捉えることであることが分かります。

「短期志向」と「統合思考」の比較
焦点 従来型:短期志向 統合報告型:統合思考
期間 短期 短期・中期・長期
時間軸の範囲 過去 過去・現在・未来
情報の種類 財務情報 財務及び非財務情報
資本の種類 財務資本 財務資本・製造資本・知的資本・人的資本・社会関係資本・自然資本
重視する最終結果 利益 価値

イ)マテリアリティ

統合思考により、組織の価値創造の全体像を捉えたら、その中でも最も組織の価値創造に重大な影響を及ぼす事項について特定していきます。これを「重要性」と呼んでいます。

現在、組織の開示情報量は年々増加傾向にあります。一方、統合報告では、「自社の価値創造において必要不可欠かつ重大な事項は何か」という視点に立脚して、重要なステークホルダーに伝達する内容を厳選し、絞り込んでいく必要があります。

英語ではless is more(少ないほど豊かである)という表現がありますが、これは国際的な開示の枠組みを検討する際にも何度も使われている表現です。逆説的に感じられるかもしれませんが、重要性の高い情報に絞り込むことにより、より質の高い多くの情報を伝達できることが可能になります。

ウ)重要事項の定量化(KPI)

重要性の高い事項を特定できたら、パフォーマンスの改善が特に必要な部分について定量化します。特に優先順位の高いパフォーマンスの方向性を示すための情報は、KPI(Key Performance Indicator)と呼ばれています。ここでいう「パフォーマンス」とは、財務パフォーマンスなど、測定基準が明確になっているものばかりではありません。

むしろ、組織としてパフォーマンスを高めたい分野は、顧客満足や従業員満足、品質やチームワークといった目には見えない無形資産です。なぜなら、組織の価値の大半を占めるのは、無形資産であり、長期の価値創造の源泉でもあるからです。

しかし、それらの無形資産については、適切に定量化をして管理し、外部へ情報開示している組織は多くはありません。なぜなら、「価値創造において改善すべきパフォーマンスは何かが絞り切れていない」ことや、「改善したいパフォーマンスの内容について戦略等で明確に記述できていない」といったことが、適切な定量化を難しくさせているからです。

それらの課題を克服し、改善すべきパフォーマンスについて定量化し、財務パフォーマンスとの関連性を踏まえて伝達することができると、組織が語る将来の価値創造ストーリーの実現性についての「確からしさ」を高めることができるようになります。

最後に

これまで企業報告に対するあり方として、様々なブームがあり、多種多様なステークホルダーからの要求がありました。今回の「統合報告」についても、別の新たな開示の「ブーム」として捉えられている企業の方もいらっしゃるかもしれません。

しかし重要なのは、持続的に企業の信頼性を高め、価値を創造していくためのレポーティングのあり方を見直すことではないでしょうか。信頼性とは、言い換えれば、長期にわたって一貫性の高い情報を提供できるかにかかっています。そのためには、開示の主体性を企業が取り戻し、企業の長期の価値創造という観点からぶれずに開示を行うスタンスが必要と言えます。

Profile

RIDEAL代表 三代 まり子
2011年に独立(https://rideal.jp/)。統合報告コンサルティング、KPI ファシリテーションを行っている。米国公認会計士。
  • 2005年~2010年:新日本有限責任監査法人にて会計監査、調査研究などを担当。知的資本・資産イニシアチブ(WICI)にて日本の製薬、自動車、電子部品産 業のKPI開発に従事。
  • 2011年~2013年:国際統合報告評議会(IIRC)にて、主にテクニカル・マネージャーとして企業報告に関する国際的な開示の枠組み(国際統合報告フレームワーク)およびConnectivity Background Paperの開発に従事。また、リレーションシップ・マネージャーを兼務し、日本国内およびアジアでの統合報告の展開を担当。
  • 2014年4月~現在:早稲田大学商学学術院総合研究所WBS研究センター招聘研究員。

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