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ブレーンセンターの「視点」
戦略と分断されたマテリアリティその関係性、説明できますか?
変えていないこと自体は、問題ではない
「マテリアリティですか?前の中計のときに整理したもので、今も基本はそのまま使っています。見直しはしてないですね」
統合報告書の制作に関わっていると、こうした言葉を耳にすることがあります。実際、多くの企業にとってマテリアリティは、時間をかけて整理し、取締役会の承認を経て外部にも開示しているものです。簡単に変えられるものではありませんし、短期間で見直すような性質のものでもありません。そこは多くの皆さんが理解していると思います。
ただし、問題は別のところにあります。皆さん、「今、経営の説明の中で、マテリアリティがどのような役割を果たしているのか」にきちんと答えられますか。統合レポートの中で、マテリアリティのページは、社会課題との対応関係も、特定プロセスも丁寧に書かれている。ただ、その先を読み進めても、マテリアリティの存在感が薄い。戦略の説明にも、事業の話にも、ほとんど影響を与えていないように見える。結果として、この会社はマテリアリティが意思決定とリンクしていない。戦略とつながっているように見えるけれど、よく見るとそうでもない。そんな風に思える統合報告書が少なくありません。
戦略の説明に、マテリアリティは現れているか
マテリアリティと戦略の関係は、多くの企業で何らかの形で示されています。対応表やKPIの紐付けなど、形式としては整っています。ただ、それだけでは十分とは言えません。戦略を読んだときに、「なぜそれをやるのか」がマテリアリティと紐づけて説明されているかどうか。ここが見えないと、マテリアリティが機能しているとは言いにくくなります。
例えば、成長領域への投資やデジタル化の推進といった方針が示されている一方で、マテリアリティとして環境や人材が挙げられている。どちらも方向性としては正しいのですが、そのあいだのつながりが読み取りにくいケースがあります。この場合、マテリアリティは整理されたテーマとして存在し、戦略は別の文脈で語られているように見えてしまいます。
一方で、きちんと説明がつながっている企業もあります。例えば、環境対応について、どの規制や顧客要求を事業機会として捉えているのかまで踏み込んで説明されている。あるいは、人材について、どの能力がどの事業の収益性に影響してくるのかが具体的に示されている。このような書き方であれば、戦略の説明を読んだときに、その投資や取り組みの位置づけが自然に見えてきます。
ここが見えていれば、マテリアリティは説明の中で機能しており、どの事業に力を入れているのか、その判断の背景に何があるのかが、説明の流れの中で伝わってきます。見えていなければ、後から付けたラベルのように受け取られてしまいます。
そのマテリアリティに、経営の判断は示されているか
もう一つ、論点としておきたいことがあります。マテリアリティは社会課題の一覧として捉えられがちですが、統合報告書の中で求められているのはそこではありません。マテリアリティは社会課題をもとに整理されますが、その段階ではどの企業も似たような項目になります。環境や人材といったテーマが並ぶところまでは、大きくは変わりません。その中で、何を機会として捉えているのか。どこで勝とうとしているのか。逆に、どこは優先順位を落としているのか。この選択が見えないと、すべてが同じ重要度に見えてしまいます。もう少し付け加えると、その判断が事業や業績の話題につながっているかが重要です。どの分野に影響があるのか、どんな投資やリスクとして現れてくるのか。こうした判断が示されていないと、マテリアリティは“良いことが並んでいるだけのページ”に見えてしまいます。
いまの戦略・経営と、ずれていないか
マテリアリティは、頻繁に作り直すものでもありません。変えにくいものだからこそ、その扱い方が問われます。問題とされるのは、今の経営との距離です。
戦略や事業の説明が更新されていく一方で、マテリアリティだけが過去の整理のまま残っている。そうなると、両者のあいだに少しずつズレが生まれていきます。戦略や事業の説明の中で使われているのか。それとも、マテリアリティページの中に、従来のまま置かれているのか。
統合報告書全体を見渡したときに、そのズレが出ていないか。一度その視点で見直してみると、気づくことがあるはずです。もし、新たな中期経営計画の策定に合わせて全体のストーリーを組み直すタイミングにある場合や、マテリアリティ特定から一定の年数が経過している場合には、一度立ち止まって見直す価値があります。ブレーンセンターでは、マテリアリティの特定そのものだけでなく、それをどのように経営の言語として統合報告書に組み込むかまで含めて支援しています。そうした機会があれば、ぜひ一度ご相談ください。