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クライアント企業の情報開示、ブランディングの進化・深化を考える
ブレーンセンターの「視点」
マテリアリティを、現場の判断に結びつける映像設計言葉では実現できない腹落ち感を、映像で、どう生み出すのか
「理解はした。でも、仕事に活かせない」──従業員に向け、情報の届け方を見直す
サステナビリティ推進のご担当者さまとお話する機会が多い当社。こんな声を聞くことがあります。「サステナビリティ経営やマテリアリティについて浸透を図ろうとして、説明会も社内報も研修も実施した。それでも社員から、自分の仕事とは結びつかない、という反応が返ってくる」。
これは社員の関心が薄いからではなく、情報の届け方に課題がある場合がほとんどです。「理解させること」が主目的な内容のコンテンツだと、多忙な現場では「また覚えるべきことが増えた」という受け取り方をされたり、「とはいえ目の前の業務で使っている、普段の判断軸があるし」と、自分とは関係のない話と感じさせてしまうことがあります。論理の筋道を丁寧に組み立てるほど、感情的な納得から遠ざかってしまう──そのジレンマが、多くのサステナビリティ浸透施策の壁になっています。
視覚情報が担う役割──速さではなく、文脈の力
では、「理解させる」ではなく、自分の業務と関係のある話と感じさせるにはどうしたらよいのか。当社は、目的をはっきりさせ伝えることを絞った映像での発信は有効な手段のひとつだと考えています。映像の強みとして「視覚情報は文字の約6万倍の速さで脳に処理される」という言及がなされることがあります(Press Association Graphics等による)。この数値の解釈には諸説あるものの、視覚情報が言語情報より直感的に処理されやすいという認知科学的な知見は、映像設計を考えるうえで参考になります。テキスト情報では理解しにくかった技術の詳細が、映像を見ると、「あ、こういうことか」という理解できる経験を、皆さんもされたことがあると思います。情報の「形」が変われば社員の受け取り方も変わるということです。
ただ、映像が浸透に寄与するのは、単に速く伝わるからだけではありません。映像には、文脈ごと届けられるという特性があります。これが、抽象度や自分の仕事との距離感といった浸透における障壁に対して、効果的な役割を発揮します。
まず、「社会価値」といった抽象度が高い言葉が多く出てきがちなマテリアリティやサステナビリティの文脈では、それを現場の日常で使われる具体的な文脈へと置き換えることが必須です。また、本社発信の情報を、現場の従業員は自分と同じ仲間の発信と受け取りにくく、関係のない話と遮断しがちです。リアルさを伝えることで、同じ会社で同じ志を持って働く社員からのメッセージであることが伝わります。また、策定メンバーや経営陣の思いのこもったマテリアリティでも、テキスト情報を介すと、その熱量は半減してしまうことが多々あります。映像で経営者の表情や現場の空気感を映し出すことで、言葉だけでは伝わりにくい本気度を届けることができます。
目的から逆算する映像の型
多くの案件の支援を通じて気づいたことがあります。サステナビリティのような、正解がなく現在も各社で進行中のテーマにおいて、映像を制作する前に、まず「誰に、何を届けたいのか(どのような判断をする時に使ってほしいのか)」を定義することが大変重要だということです。なぜなら浸透のフェーズや目的によって、選ぶべき映像の「型」がことなり、型の合う合わないもあるからです。
1. ビジョン共感型(浸透の初期フェーズ)
「なぜ変わらなければならないのか」を組織全体で共有したい時期に適した型です。マテリアリティの個別項目を論理的に説明するよりも、会社が目指す方向性や、サステナビリティに取り組む意義そのものへの共感を生み、モチベーションを喚起することに主眼を置きます。
2. 体系理解・解説型
マテリアリティの全体像や、各項目の定義を正確にインプットしたい場合に有効な型です。「自分ごと化」を促す前提として、まずは全社員の知識レベルを揃えたい、あるいは新しい方針の全体構造を誤解なく伝えたい場面に適しています。
3. 現場実践・ドキュメンタリー型(腹落ち・自分ごと化のフェーズ)
抽象的なマテリアリティを、現場の具体的な判断軸へと結びつけたい段階で効果を発揮する型です。他部署の社員が実務の中でどう悩み、どう判断したかを、失敗も含めたプロセスとして共有します。「自分の業務にも関連しそうだ」「自分も迷ったらこれを判断軸にしよう」という感覚を持たせるのに向いています。
これらを使い分けるうえで映像設計の核心となるのは、「理解させるために答えを届ける」ことではありません。視聴後に「うちの部署ではどうする?」という対話が自然に生まれるような、問いや余白を残すことにあります。
実務で陥りやすい落とし穴
設計段階でよく起きるのが情報の盛り込みすぎです。「あれもこれも」と言いたいことを詰め込んだ10分の映像より、ひとつのメッセージに絞った3分の映像の方が、視聴後の行動変容につながりやすいというのは、制作支援を通じた実感です。
また、サステナビリティのKPIや施策は年次単位で更新が続くため、後から部分的に差し替えられる「モジュール構造」で制作しておくようなことも、コストを抑えながら情報の鮮度を保つために実施したりします。
さらに、映像を配信して終わりにするのではなく、社内に共通の言語や記憶を作るためのツールとして設計することで、その価値は大きく広がります。映像の中で印象的なシーンや言葉をひとつ選び、後続の研修、社内報、統合報告書の中でも同じビジュアルやキーワードを繰り返し使用する。そうすることで「あの動画のあの場面」という共通の参照点が組織に生まれ、判断の基準として自然に根づいていきます。
「知識」を増やすための映像ではなく、社員の「判断」をひとつ変えるための映像。そのような小さな積み重ねが、言葉だけでは形骸化しがちなサステナビリティの取り組みを、実際の企業文化として根づかせていくことにつながると考えています。