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クライアント企業の情報開示、ブランディングの進化・深化を考える
ブレーンセンターの「視点」
「視覚化」で心に響かせる。サステナビリティ広報の最前線。

視覚情報は文字よりも60,000倍も速く処理できる
「この企業は長期的にどんな価値を生み出していくのだろう」「この企業は環境に配慮していると聞いたが、具体的にどんな取り組みをしているのか」――こうした疑問は多くのステークホルダーが抱えるものです。また、消費者や投資家から、「サステナビリティは概念としては理解できるが具体的なイメージをもちにくい」という声があがることもあります。
近年、サステナビリティの観点が盛り込まれた「パーパス」や「ビジョン」が続々と発表されています。また、多くの企業が「サーキュラーエコノミー」や「カーボンニュートラル」を、自社の経営課題として挙げています。しかし、これらの「言葉」や「説明」だけで、そこに込められたメッセージや、取り組みの意義を十分に伝えることは困難です。ここで力を発揮するのが“視覚化”です。
実は人間の脳は、視覚情報を文字情報より60,000倍も速く処理できるといわれています※。例えば、「1トンのCO2削減」と言われてもピンときませんが、それが「東京から大阪まで車で10往復分」であることを示したイラストなどを添えれば、わかりやすさはグンと上がります。
※出典:3M Corporation, 2001

「透明性」と「ストーリー性」においても視覚化は有効
こうした「わかりやすさ」に加えて、視覚化は「透明性」の面でもメリットがあります。サステナビリティ活動において、「本当にやっているの?」という疑念を抱かれることは大きな壁となります。活動の「透明性」はステークホルダーとの信頼構築に不可欠です。視覚化によって、目に見える形で証拠を示すことで、「グリーンウォッシュ(見せかけの環境活動)」の疑いを払拭できる効果も期待できます。
また、私たちは「ストーリー性」を伝える上でも視覚化が有効であると考えています。同じ事実でも、単なる数字で説明されるよりも、心を動かすドラマ仕立ての映像表現の方が記憶に残る。皆さんもそういった経験がありませんか?
動画で、ビジョンやマテリアリティなど、今後、自社が「どうなっていきたいのか」、そのために「何をしなければならないのか」、つまり未来への道筋を描くこともできます。レポート(情報開示)では、説明調になりがちですが、映像をうまく活用すれば「未来像」や「理想」を視覚化し、エモーショナルな表現でステークホルダーの心を動かすことができます。
心に響くサステナビリティ広報のポイント。
1. 映像で魅せる物語の力
「百聞は一見にしかず」――このことわざの通り、映像には強い説得力があります。言葉で説明するよりも、「見せる」方が早いのです。サステナビリティの取り組みは数値やプロセスだけでなく、感情に訴えかけるストーリー性が重要です。視聴者の心に残る映像は、単なる情報伝達を超え、深い理解と共感を生みます。
共感・共鳴を呼び、行動変容を促す映像の事例
- 企業が目指す未来の「ありたい姿」を視覚化する
具体的なビジョンを示すことで、抽象的な目標が現実味を帯びます - その実現に挑む「従業員の挑戦」を視覚化する
リアルなドキュメンタリー映像で人の顔や表情を見せることで親近感と信頼性が高まります - その実現を支える「技術」を、複雑な概念も分かりやすく伝えるアニメーションで伝える
専門知識がなくても理解できる表現で、難解な取り組みの価値を伝えられます
2. シンプルすぎず、複雑すぎず
専門家にも一般の人にも響く「ちょうどいい」表現を目指しましょう。サステナビリティは専門性の高い内容を含むことが多いですが、難解すぎると伝わりません。かといって単純化しすぎると本質が失われます。投資家、消費者、従業員、それぞれの「見たいもの」は異なるので、「誰に(ターゲット)」「何を」「どのように」伝えるかを、事前に明らかにすることが重要です。情報の階層化も効果的です。最初に大きなメッセージを伝え、興味を持った人がより詳しい情報にアクセスできる仕組みを作りましょう。
3. 一貫性を保つ
あらゆる接点で「同じ顔」を見せることで記憶に残ります。サステナビリティのメッセージは、単発のキャンペーンではなく、長期的な取り組みとして一貫性を持たせることが重要です。一貫性のある視覚表現は、断片的な情報を一つの大きなストーリーとして人々の記憶に定着させ、企業やブランドへの信頼構築にも貢献します。
一貫性を保つためのポイント
- 色彩やデザイン要素の統一:特定の色やアイコンを一貫して使用する
- キーメッセージの反復:核となる考え方を様々な角度から繰り返し伝える
- ブランドとの整合性:企業全体のビジョンやミッションと取り組みを結びつける
- メディアミックス:ウェブ、SNS、報告書、広告など異なる媒体でも同じトーン・内容を維持
- 長期的な時間軸の設定:「2030年まで」など明確な目標期間を示す
サステナビリティの視覚化は、単なる「見栄え」の問題ではありません。複雑な課題や問題を「自分ごと」に変換し、人々の行動を後押ししていくことで、企業と社会のサステナビリティ向上につながっていくはずです。単なる「言葉」を「実感」に変える“視覚化”。
サステナビリティ広報をさらに効果的なものとするために、皆さんも始めてみませんか?