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クライアント企業の情報開示、ブランディングの進化・深化を考える
ブレーンセンターの「視点」
キャリア採用と統合報告書の関係を考える新たにジョインする社員に向けた活用方法

近年、人出不足の影響で転職市場は活発化し、若年層だけでなく中高年の割合も増えています。「統合報告の行方」シリーズの第3回は“キャリア採用”における統合報告の活用方法を考察します。キャリア人材との関わりにおいて、入社前と入社後にどのような活用方法があるのか考えていきます。
キャリア人材に選ばれる会社になるために
一般的に転職理由の上位にくるのは「労働時間や環境」「給与」への不満ですが、「会社の将来性」「会社のビジョンや方向性」など、自社の今後に対する不安から転職を意識する人もいます。他にも「年収を上げたかった」や「働き方の見直し」といった理由からは、仕事にやりがいがあり、自身が成長できる職場を求めていることも見えていきます。
さて、ここで質問です。給与や待遇が同じだったとして、皆さんの会社は会社の将来性やビジョン・方向性、仕事のやりがいといった観点で選ばれる会社と自信を持って言えますか。そのために戦略的な情報発信はできていますか。
最近では「統合報告書やIR資料を読みましょう」と指南する転職支援サイトもあり、キャリア人材の中でも一定数は転職活動時に相手先企業の統合報告書を読んでいると聞きます。「放っておいても読んでもらえるだろう」ではなく、統合報告書を活用してキャリア人材向けの訴求力を高めていく方法としては以下が考えられます。
活用方法 ~転職先として選んでもらう~
キャリア採用向けサイト
最近では新卒採用サイトに加えて、キャリア採用サイトを用意する企業も増えています。統合報告書内の情報を活用して理念やパーパスなど会社のビジョンや方向性への理解を得るためのコンテンツを用意したり、自社の強みや経営計画をわかりやすく説明することで自社の将来性・戦略への納得度を高めてもらうことが重要です。
オウンドメディア
社会課題の解決に向けた取り組みや新技術やサービスについて情報などを情報発信するWebサイトを作成する企業が増えています。こうしたプラットフォームをお持ちの企業では、ぜひキャリア人材の活躍ぶりやどのような点にひかれて入社したのかなど、ぜひ発信してみてください。
キャリア人材が入社した後に企業がやるべきこと
活用方法 ~自社への理解を深め、戦略の担い手となってもらう~
晴れて入社したキャリア人材に期待することは、これまで培ってきた専門性やスキルを発揮して活躍してもらうことでしょう。ここで重要なのが、「鉄は熱いうちに打て」です。入社にあたって貴社の統合報告書を読んだ(かもしれない)キャリア人材に対して、理念やビジョン、戦略などを理解してもらう場をなるべく早く設けておくのが大切です。M&Aで企業やグループに参加した従業員も同じように考えてよいでしょう。
統合報告書の解説ツール
中期経営計画に基づく成長戦略の担い手となってもらうためには自社の現在地や将来に関する深い理解が不可欠です。解説動画やダイジェスト版、スピンオフツールなど、自身の業務と紐づけて考えてもらうためのツールを通じて統合報告書を読むためのきっかけをつくりましょう。
キャリア人材向けワークショップ
新卒で入社した従業員は同期という概念がありますが、入社時期が異なるキャリア人材には同期という感覚は薄いものです。そこで同時期に入社したキャリア人材を集めて懇親会や研修を実施している企業があります。こうした集まりの際に、統合報告書やサステナビリティなどの観点でのワークショップなど行うことで横のつながりを強化しつつ、自社への理解促進につながるはずです。
統合報告書の可能性
人材採用における統合報告書の活用方法について3回にわたって考察してきました。
第1回:統合報告が採用の切り札に⁉「人材採用」への活用方法を考える
第2回:学生向け企業研究ツールとしての統合報告書。自社の魅力・成長性の本質を理解してもらう
東京証券取引所の市場改革が進むなか資本市場との対話において統合報告書の重要度が増しています。
半年以上かけて社内の多くの部門を巻き込んで作成する統合報告書。報告書そのものに加えて、その作成過程で得た情報を活用していくことがますます重要になるはずです。
この3回で話題に上げた内容について「学生さんが統合報告書なんて読んでくれると思えない」「長年在籍する従業員に対する理解や浸透でもうまくいっていないのに、キャリア人材向けにうまくいくのか」というご意見もあるでしょう。当社もこの分野はまだ手探りですが、そこに課題がある限り、なんとしても解決策を考え出してみせます。
それでは「統合報告書の行方」シリーズはいったん終了です。開発中のサービス・商品が具体化したタイミングに記事を執筆予定です。お楽しみにお待ちください!