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クライアント企業の情報開示、ブランディングの進化・深化を考える
ブレーンセンターの「視点」
Webブランディング最新事例10選!トレンド対応からマイクロブランディングまで
前回の記事では、近年のコーポレートサイトを俯瞰したときに見えてくる4つのトレンド「サステナビリティ」「イノベーション」「ピープル」「ストーリー」をご紹介しました。
トレンド対応の好事例
実際の企業サイトでは、これらのトレンドが複数重なり合うかたちで表現されているケースがほとんどです。また、同じトレンドを押さえていても、構成や表現の違いによって、伝わり方や印象には大きな差が生まれます。本記事では、そうした具体的な事例をご紹介します。あわせて、とくに魅力的に「らしさ」をつたえていくための参考事例もご提示します。
※本記事でご紹介している実績は、当社の実績でないものも含まれます。
事例1:デンソー「サステナビリティ×イノベーションの王道」
中長期的な視点で企業を評価する動きが強まる中、「サステナビリティ」つまり社会課題解決への取り組みや「イノベーション」を重視する姿勢をどう伝えるかは、多くの企業に共通するテーマとなっています。デンソーのコーポレートサイトでは、自動車部品メーカーという従来のイメージにとどまらず、社会課題にどう向き合い、どのような未来を描いているのかを前面に押し出した構成がとられています。トップページから、ブランドスローガンの「Crafting the Core」を体現するような、社会課題を解決しながら未来社会の“コア”をつくっていく取り組みを提示しています。また、事業紹介のカテゴリーにおいても、最初に配置されているのは製品・サービスではなく、イノベーションストーリーです。何を売っているかよりも、どんな価値を社会に提供しようとしているのかを先に理解してもらう設計になっています。
事例2:野村総合研究所「未来にフォーカスし、幅広いメディア形式で発信」
同じくサステナビリティとイノベーションの文脈で挙げられるのが、野村総合研究所です。同社のコーポレートサイトでは、「未来創発」という言葉を軸に、社会課題解決に向けた考え方や取り組みが豊富に発信されています。特に、記事コンテンツだけでなく映像や音声(ポッドキャスト)など複数のメディア形式を組み合わせることで、同社のイノベーティブな姿勢が、よりエモーショナルに、より多層的に描き出されています。
事例3:ソフトバンクグループ「理念から戦略までを体系立ててストーリー化」
理念や長期ビジョンといった抽象度の高いテーマをどう伝えるかという点では、「ストーリー」のトレンドが重要になります。ソフトバンクグループのサイトでは、理念・ビジョン・戦略がグローバルナビゲーションに配置され、体系的に整理された構造がとられています。「300年成長し続ける企業グループを目指す」というメッセージについても、関連する情報を順にたどることで、考え方と取り組みを段階的に理解できる設計になっています。
事例4:千代田化工建設「パーパスを軸にしたストーリー展開」
4つ目のトレンドとして重要なのが「ピープル」です。企業の考えや戦略を語るだけでなく、それを誰が、どのような想いと行動で実践しているのかを可視化することで、ブランドやパーパスをより実感を伴ったものとして伝えるアプローチが広がっています。ストーリーの文脈に「ピープル」の要素を重ねている事例として、千代田化工建設が挙げられます。同社のコーポレートサイトでは、グローバルナビゲーションの最初に「パーパスストーリー」が配置されています。「社会の“叶えたい”を共創(エンジニアリング)する」というパーパスを、実際のプロジェクトや社員・チームの取り組みと結びつけて紹介することで、パーパスと日々の実践がどのようにつながっているのかを具体的なストーリーとして伝えています。
事例5:三井物産「志を軸にしたピープルブランディング」
「ピープル」のトレンドを前面に打ち出している事例が、三井物産の「志ポータル」です。「すべては志から始まる」というメッセージのもと、社員が自身の志やプロジェクトについて語る動画コンテンツを中心に構成されており、一人称で語られる言葉を通じて、企業が大切にしている価値観や考え方が伝わる設計になっています。
事例6:リクルート:コーポレートブログの経営者メッセージの肉声感
同じくピープルの文脈で紹介されるのが、リクルートです。同社のコーポレートサイト内には、経営層のメッセージなどを発信するブログが設けられています。経営判断の背景や考え方、時には失敗や反省にも触れながら、率直な言葉で情報が発信されており、統合報告書やIR資料とは異なるかたちで、企業の姿勢や人となりが伝わるコンテンツとなっています。
事例7:採用ブランディングと企業ブランディングの連携
次に、少し視点を変えて、採用ブランディングと企業ブランディングの関係性を取り上げたいと思います。近年、採用サイトとコーポレートサイトが切り離されたまま設計され、メッセージやトーンに一貫性を欠くケースも少なくありません。しかし、求職者は採用サイトだけでなく、企業サイト全体、とりわけパーパスやサステナビリティ、事業の方向性に関する情報にも目を通す傾向を強めています。そのため、採用ブランディングと企業ブランディングを連動させることが重要になっています。
ソニーグループでは、コーポレートサイトで掲げるパーパスや価値観と、採用サイトのメッセージが「感動」という言葉を共有する形で構成されており、企業として目指す姿と、そこで働く人のあり方が同じ文脈で示されています。
Sony's Purpose & Values(ソニーグループ)
また、デンソーにおいては、企業サイトで打ち出している社会課題解決の姿勢が、採用サイトでは仕事やキャリアの文脈に置き換えられ、事業と仕事が連続したものとして理解できる構成になっています。
TISインテックグループでは、新しい世界の創造や社会課題の解決に取り組む「Mover」という考え方を企業ミッションとして掲げていますが、採用サイトにおいて「Be a Mover」という形で展開し、企業としての方向性と人材像を同じ軸で示しています。
「らしさ」の表現手法と好事例
これらの事例はいずれも、「サステナビリティ」「イノベーション」「ピープル」「ストーリー」という4つのトレンドを複合的に押さえたものです。一方で、同じトレンドを扱っていても、企業ごとに伝わる印象が異なるのは、Web上での構成や表現方法に違いがあるためです。ここからは、4つのトレンドを前提としながら、表現によって「らしさ」が鮮明に伝わる好事例を紹介していきます。
事例8:コクヨ「パーパスを体験できるリッチコンテンツ」
コクヨでは、120周年を機にリブランディングを行い、「好奇心を人生に」というコーポレートメッセージを打ち出しました。本サイトでは、ノートをめくるような操作感に誘われてコンテンツを読み進めていくと、次々と新しい発見やわくわくする展開が現れ、自然と先を知りたくなる構成になっています。その体験を通じて、訪問者は「好奇心に突き動かされながら世界が広がっていく感覚」を味わい、結果として「好奇心を人生に」というメッセージを体験し、実感することができます。
事例9:日本航空「世界観に没入させるスクロールテリング」
日本航空(JAL)の「ブランド」のページでは、スクロールに合わせて物語が展開していく「スクロールテリング」の手法が用いられています。ページ全体を通して、訪問者は能動的に操作するというよりも、流れに身を委ねながらブランドの世界観に引き込まれていく構成となっています。大きなビジュアルと象徴的なコピーを起点に、JALが大切にしている価値観や考え方が、一つのストーリーとして連続的に提示されます。情報を理解させるというよりも、時間軸に沿って感情や印象を積み重ねることで、ブランドの思想が自然に心に残ります。
事例10:神は細部に宿る。マイクロブランディングの重要性
必ずしもすべてのページをリッチな表現にする必要はありません。事業紹介や会社概要といったページにおいても、ビジュアルやUIの小さな工夫を積み重ねることで、企業の「らしさ」は伝えられます。Webマーケディング用語の「マイクロコピー(短いけれども効果的に働く言葉)」になぞらえて、「マイクロブランディング」と呼んでいます。サントリーホールディングスでは、サイト上でカーソルを動かすと水の波紋が広がるインタラクションを取り入れることで、「水」や「自然」と深く結びついたブランドの世界観を体感的に表現しています。視覚的な演出にとどまらず、操作そのものを通じてサントリーらしさを感じさせる設計となっており、ブランドメッセージを直感的に伝える工夫が見られます。
プリマハムでは、見出しやボタン、装飾要素にハムやソーセージなどを思わせるやわらかなモチーフや色使いを取り入れることで、食品メーカーとしての親しみやすさや安心感を表現しています。情報量の多い企業サイトでありながら、堅くなりすぎないトーンを維持することで、生活者との距離感を縮める役割を果たしています。
日本電気硝子では、ガラス素材を想起させる透明感や反射表現を用いたビジュアルによって、同社の技術や事業の本質を視覚的に伝えています。製品や用途を直接説明するだけでなく、素材そのものの特性を表現に落とし込むことで、「何を強みとする企業なのか」を感覚的に理解できる構成となっています。
「らしさ」の表現手法と好事例
いかがだったでしょうか?4つのトレンドは、いまや多くの企業サイトに共通する前提となっています。そのうえで、Webならではの表現や体験設計を通じて、自社の「らしさ」をどう伝えるかがコーポレートサイトの価値を左右します。トレンドに応えながら、自社ならではの考え方や姿勢をどのように表現していくのか。その検討こそが、これからのWebブランディングの出発点です。
次回は、当社がコンサルティングから企画・制作までご支援した、カリモク家具様のコーポレートサイトリニューアルプロジェクトをご紹介します。題して、「企業の本質を言語化し、かたちにする――カリモク家具 Webリニューアルの全記録」。従来サイトの「情報量は多いにもかかわらず、企業の本質が伝わりにくい」という課題に、カリモク家具様はどのように向き合ったのか。「木とつくる幸せな暮らし」というコンセプトが、どのように表現へと落とし込まれていったのか。約15か月にわたる“共創”の軌跡として紐解いていきます。どうぞご期待ください。