株式会社 ブレーンセンター株式会社 ブレーンセンター

Search検索

探したいキーワードを入力してください

投資家向け広報(IR支援)

脱炭素に向けた日本企業の針路
―2050年カーボンニュートラル宣言をうけて―

法政大学 人間環境学部 教授
長谷川 直哉

掲載日:2020年12月11日

02パリ協定が描く未来像

菅政権は脱炭素社会の構築に向けて大きく舵を切った。これまで日本政府の腰の引けた脱炭素政策の陰で、変革を先送りしてきた日本企業は大きな衝撃を受けたのではないだろうか。

日本企業は既存事業のあり方を問い直し、ビジネスモデルをドラスティックに変革することを迫られている。責任投資原則、責任銀行原則、持続可能な保険原則の登場によって、投資・融資・保険引受の面からビジネスモデルの変革に向けた圧力が加速している。投資家・銀行・損害保険会社にとって、炭素排出は企業価値を棄損しかねないリスクであるという認識が定着しつつある。

こうした流れの中で注目されたのが、気候ネットワークがみずほフィナンシャルグループに対して、パリ協定の目標に沿った投資を行うための指標および目標を含む経営戦略を記載した計画を年次報告書にて開示するよう求めた株主提案である。今年6月の株主総会で、この株主提案は否決されたものの、約34.5%の株主がこの提案を支持され、サステナビリティへの取り組みを強化が企業経営にとって欠かせない要件であることが確認されたといえよう。

株主提案の内容

「当会社がパリ協定及び気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に賛同していることに留意し、パリ協定の目標に沿った投資を行うための指標および目標を含む経営戦略を記載した計画を年次報告書にて開示する」という条項を定款に規定する。

温暖化問題を解決するには、社会経済システムとビジネスモデルの脱炭素化を図る以外に方法はないだろう。これまでも、気候変動に対する国際的な枠組みを背景に、企業は独自の取り組みを行ってきた。しかし、低炭素を目標とした活動では、温暖化の根本的な解決には至らなかったのである。

パリ協定で示された2℃目標を実現するには、脱炭素というパラダイムをビルトインした社会経済システムを構築しなければならない。戦後、日本企業は消費社会の勃興を背景に機能・品資・価格を磨き上げる大量生産方式を築き、経済成長を牽引してきた。しかし、パリ協定の登場によって、日本企業は競争優位の源泉となった資源エネルギー多消費型ビジネスモデルを捨て去ることが迫られている。

勿論、これは容易なことではない。企業の多くが既存のビジネスモデルを維持しつつ、脱炭素の潮流を乗り切りたいと考えているであろう。しかし、社会と企業の持続可能性という視点に立てば、脱炭素志向のイノベーションをドライバーとする経営パラダイムの転換こそが、日本企業が生き残る道なのではないだろうか。

Profile

法政大学 人間環境学部 教授
長谷川 直哉
1982年安田火災海上保険株式会社に入社し、資金証券部、株式部、財務企画部、損保ジャパンアセットマネジメント等において資産運用業務を担当。1999年エコファンド「ぶなの森」を開発。2002年早稲田大学大学院法学研究科修士課程修了(法学修士)、2005年横浜国立大学大学院国際社会科学研究科博士後期課程修了(経営学博士)。2006年山梨大学大学院准教授、2011年から現職。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。

オピニオン一覧へ

企業コミュニケーションに関することなら、どんなご相談でも承ります。
ご質問から見積依頼まで、お気軽にお問い合わせください。

お電話でのお問い合わせ(受付時間 平日9:00~18:00)

※出版に関するお問い合わせは
本社(06-6355-3300)まで。

ブレーンセンター概要ダウンロード

特徴を端的にまとめ、制作事例を多数掲載しています。
直近でご相談がない場合もぜひご覧ください。