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投資家向け広報(IR支援)

脱炭素に向けた日本企業の針路
―2050年カーボンニュートラル宣言をうけて―

法政大学 人間環境学部 教授
長谷川 直哉

掲載日:2020年12月11日

04「アウトサイド・イン」思考でビジネスを創り直す

現代社会は地球温暖化や資源枯渇など、これまでに経験したことのない問題に直面している。SDGsとは、こうした問題を体系的に整理した、いわば「グローバル社会の困り事リスト」なのである。

私たちは、企業活動が地球の生態系サービスの恩恵で成り立っていることをすっかり忘れていたようである。いますべきことは、企業活動から生み出される富は有限であること、富の源泉は地球の生態系サービスにあることを改めて認識することであろう。

事業構造の変革に着手する前に、企業はこの真実を受け入れることから始めなければならない。産業革命以降、人間は高度な技術を手に入れてきた。しかし、地球の生態系サービスが提供してくれる地下資源や化石燃料がなければ、私たちは何も生み出すことはできない。これまでのイノベーションとは、生態系サービスの恩恵を知恵と技術で作り変えているに過ぎないのである。

地球サミット(1992年)で提唱された「サステナビリティ」概念の登場から、企業経営の使命として、経済、社会、環境の持続可能性を高めることが、グローバルコンセンサスとなった。

私たちは、これまでの成功体験が通用しない、不連続な時代を生きていることを認識すべきであろう。つまり、従来の延長線上で経済成長を考えることは、もはや通用しないのである。既存のビジネスモデルを多少修正しただけでは、サステナビリティは実現できないだろう。

いま企業に求められているのは、不連続な社会と向き合いながら、長期的な視点で企業と社会のあるべき姿を構想する経営構想力を持つことである。SDGsやパリ協定は、「持続可能性」と「脱炭素」という二つの視点からビジネスモデルの変革を求めているのである。

気候変動による負の影響を克服するには、化石燃料への依存から脱却した脱炭素イノベーションが欠かせない。脱炭素イノベーションとは、これまで築いてきた競争優位を捨て去るのではなく、「企業の知」と「社会の知」を結合させて新たな価値を生み出すことである。

SDGsの目標17は、多様な主体とのパートナーシップの重要性を指摘している。変革の基点となる外部組織との連携を通じて、新しい仕組みを作り上げることを企業に期待したい。

企業を基点としてビジネスを考える「インサイド・アウト」アプローチでは、これまでの価値観を根本から変革していくことは難しい。「持続可能性」と「脱炭素」を基軸とするビジネスの再構築を成功に導くには、社会を基点としてビジネスを構想する「アウトサイド・イン」アプローチが欠かせないのである。

Profile

法政大学 人間環境学部 教授
長谷川 直哉
1982年安田火災海上保険株式会社に入社し、資金証券部、株式部、財務企画部、損保ジャパンアセットマネジメント等において資産運用業務を担当。1999年エコファンド「ぶなの森」を開発。2002年早稲田大学大学院法学研究科修士課程修了(法学修士)、2005年横浜国立大学大学院国際社会科学研究科博士後期課程修了(経営学博士)。2006年山梨大学大学院准教授、2011年から現職。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。

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