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投資家向け広報(IR支援)

脱炭素に向けた日本企業の針路
―2050年カーボンニュートラル宣言をうけて―

法政大学 人間環境学部 教授
長谷川 直哉

掲載日:2020年12月11日

06「知」の融合が生み出す価値創造

優れた技術を起点としたイノベーションが企業価値の源泉であるという信念が、「インサイド・アウト」アプローチ型の価値観を醸成し、この呪縛から抜け出せない日本企業は未だに多い。業種や業界の垣根を超えた企業間連携や、非営利組織との協働から展開されるオープン・イノベーションは、日本企業が最も苦手とする領域である。

日本企業は「インサイド・アウト」アプローチから抜け出せず、テクノロジーオリエンテッドに陥っているように感じる。テクノロジーオリエンテッドやマーケット・オリエンテッドの優位性については、様々な意見がある。しかし、どちらが優位なのかという議論は、あまり意味が無い。むしろ、テクノロジーとマーケットを統合したソーシャル・オリエンテッドという概念に注目すべきであろう。

社会が技術を生み出し、技術が社会を築くという視点に立てば、両者が不可分な関係にあることは容易に理解できるはずである。日本企業がSDGsや脱炭素と正面から向き合い、その過程で新たなオポチュニティを見出していくには、多様な主体とのパートナーシップが鍵を握っている。脱炭素イノベーションには、外部組織との緊密なリンケージを構築して、異質な知を最大限に活用することが求められているのである。

脱炭素イノベーションを一言で表現すれば、パートナーシップを通じて社会性と経済性を兼ね備えた他社には真似できない「ダントツなインパクト」を持つプロダクトを生み出すことである。かつての日本企業は、機能・品質・価格面でダントツなインパクトを提供してきたが、SDGsやパリ協定はこれらを超える新たな付加価値の創出を求めている。

多様な主体との連携・交流を通じて生み出されたナレッジから、人々の意識とライフスタイルを変えるインパクトのあるビジネスが生み出されるのであり、これが脱炭素時代に求められる企業の社会的使命といえよう。

エデルマン・ジャパンの調査によると、日本では社会問題に対する企業の姿勢を理由にブランドを選択する「ビリーフ・ドリブン(信念にこだわる)」消費者の割合が6割を占めている。多様性や個性を重視するミレニアル世代を中心に「ビリーフ・ドリブン」はあらゆる世代に浸透している。

SDGsやパリ協定に対する企業の姿勢が問われる時代となった。持続的な成長を実現するには、社会問題に対するプロアクティブな取り組みを通じて、ステークホルダーから共感を得ることが欠かせないのである。

図2 持続可能なビジネスモデル

出所:藤井剛(2014)『CSV時代のイノベーション戦略』37頁を基に筆者修正

Profile

法政大学 人間環境学部 教授
長谷川 直哉
1982年安田火災海上保険株式会社に入社し、資金証券部、株式部、財務企画部、損保ジャパンアセットマネジメント等において資産運用業務を担当。1999年エコファンド「ぶなの森」を開発。2002年早稲田大学大学院法学研究科修士課程修了(法学修士)、2005年横浜国立大学大学院国際社会科学研究科博士後期課程修了(経営学博士)。2006年山梨大学大学院准教授、2011年から現職。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。

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